散歩から戻ってきたの元気が無いんだけど…何かあった?
ユーリに聞いてみれば、自分の“父親”が何処にいるのかを気にしているらしい。
出先で何があったんだい?




別段落ち込んでいるわけではなく、本当に考え込んでいるだけだからまだ良いけど覇気が無さ過ぎだよ。
デクスが近づいても、ラピードが傍にいても反応は全くなし。









父親がいないの…そんなに気になるってことはやっぱり寂しいのかな。









そうこうしている内にも時間は過ぎ、夜になっていく。
僕は黙り込んでいるを抱き上げ風呂場へと向かった。






















、父親がいないと寂しいのかい?」


ゆっくり湯に浸かりながら訊ねると、ゆるゆると首を横に振った。
寂しいわけじゃない…じゃあ



「じゃあ父親がいたら嬉しいかい?」


そう聞くと少し間を空けてコクリと頷いた。





「…あのね、かいるとか、ろいどがしゅたんやくらとしゅといっちょにいたらいいなあっておもうの。
 みんながいるからさみしくないの。でもうらやましいの」




“いない”ということを気にしたことは無いが、“いる”ということが羨ましいのだと彼は言う。
まあ親子でアドリビトムしてるあの二組がよく目に付く所為もあるだろうな。





風呂から上がり、談話室に行けばくつろぐメンバーの姿があった。
はラピードの方へ駆け寄り、枕のように顔を埋めた。

「そろそろ眠いのかもしれないな。グリューネ任せても良いかい?」
「ええいいわよ〜。ちゃん、おねんねしましょう?」


グリューネに手を引かれながらは部屋を出て行った。














がいなくなった後、ユーリは僕に聞いてきた。


の母親って知ってるか?」

答えはNO。残念なことに彼の身の上話なんて聞いた事が無い。


「母親のことは言わなかったから、いるとは思うんだけどよ…」
「けど、見た事が無いね」
…明日には元気になってると良いな」

デクスの言葉に同感して、僕らも休む事にした。
























次の日、すっきりとした目覚めを迎えてみれば同室のユーリは既に部屋にいなかった。
いまだ寝ているデクスを放って階下へ降りると、朝食であろうパンの焼ける匂いが風に乗ってきた。




「おはよう」
「よー。飯出来てるぜ」
「みたいだね。紅茶淹れたいから隣借りるよ」


料理の盛り付けをしているユーリの横で紅茶用のポットを用意する。
僕特製ブルーベリージャム入り紅茶、コレがなきゃ朝は始まらないね。
カップの用意をしていると軽い足音が聞こえてくる、勿論考えなくてもこんな足取りは一人しかいない。




「つくえふけたよ!」


台拭きを持って、満足そうな笑みを浮かべたがキッチンへ入ってきた。


「おーサンキュ。んじゃこれはご褒美だ」



ユーリが小さく切った林檎をの口元に運んでやれば、鳥の雛のように口を開けた。
嬉しそうにそれを食べたは笑顔でこう言った。











「ありがとっゆーりおにーちゃ!」




ピタリとユーリが固まり、僕は思わず沸かしたてのポットに素手で触れてしまった(熱っ!)



「…?どした、それ…」



ユーリが動揺を隠しながら聞くと、は少しはにかみながら答えた。


「あのねきのうぐーねえちゃがね」

グリューネの呼び方まで変わってる…昨日一体何があった!?















「おんなじおうちにしゅむひとたちはかぞくなのよっていったの。

 だからこのおうちにおとまりしたひとはみんなのかぞくなんだって!」















…流石グリューネ。一番良い答えをにあげたんだ。
下手に説明したり、言い訳するより一番納得させやすい。



「へえ、じゃあ僕も家族かい?」
「うん、されもおにーちゃなの」



…なんかすっごく可愛いんですけど。何この愛らしい生き物。



「良かったな。はいっぱい家族がいるじゃねえか」
「あい!」

そう言って笑った顔は昨日あったことを吹き飛ばすくらい晴れ晴れとしていた。







その後、デクスにも同じことを言ったが感激したデクスに飛びつかれていた。




























その後、交代の為広場に向かう途中で今までのメンバーに出会った。


「がいおにーちゃ!」

「え…、今なんて…?、もう一回言ってくれ!」

「がいおにーちゃ?」
ーーーーー!!」


感激して涙を零すガイ。



















「りおん、わりゅたー、しんく、りっど、りゅか」



「なんで俺達は前と同じなんだ?」
「多分元の年齢より年上の人間だけなんだと思うぜ?」



「ぱぱー!!」


が駆け出した先にいたのはクラトスとフォレスト。


「「「「「パパ!!?」」」」」





「(じーん)…」
「くっ、何故か目頭が熱い…」
















、俺達男には良いけど女性陣には簡単に“ママ”って言っちゃ駄目だぞ。怒る人もいるかもしれないからな」
「?のままはもういるよ」
「へ?そうなのか?」
「うん!のままはめがみさまなのっ」
「???」




の言葉の意味がわからないガイは首を傾げていた。




















さて、僕達の次は誰かな。




待ち合わせの場所に近づいていけば見えてくる姿。













「……僕らは何も見なかった。そうきっと幻覚に決まってるよ」

「…そうだな。俺達は何も見てないよな。よしっお菓子買ってやるからちょっと向こうに行こうか」

「おい、現実逃避するな。ちゃんと目の前を見ろ」



僕達が絶句するのも無理は無いと、絶対断言出来る。
おかしいでしょ!!!クジとは言え、なんでこの四人が組み合わされるのさ!























「あら待っていたわよ」

「おっそーい!!何やってたのさー!」

「私達だってこの日を楽しみにしていましたのよ」

「……何故俺がこのグループなんだ」






待っていたのはリフィル・アーチェ・ナタリア・リヒター。



全員、『××料理人』称号持ちじゃないかぁぁぁ!!!



ダメだ!!!このグループにを預けたらの胃…いや、味覚そのものが破壊される!!!
誰かこのチームに一人でいい!!常識人を足せ!!!






「お、おい…。ちょっと聞いてみるがお前等だけか?」
「何を当たり前なことを言っているの?今まで四人でやってきたのでしょう?」
「い、いや…でもなぁ」




デクスが小さな希望を込めて聞いてみたけど…やっぱりこの四人だけなんだね。

駄目だ。絶対にこの四人でやらせるわけにはいかない。





さて、どうしたものか………。
僕達がどうにかこのグループだけは回避したいと思案していると、呑気に口笛を吹きながら歩く男を見つけた。






僕とユーリとデクスは見事に息の合った動きでそいつを捕まえた。











「「「ヒスイっ!!!!」」」

「うおわっ!!!な、なんだてめーらっ!」






ヒスイはと出会って日が浅いと聞いている。
それ故今回の世話係に立候補していない。






「丁度良いところに通った!!!」

「お前、あのグループに加われ!」

「確か君、料理は並程度には出来るよね?!」



こうなれば誰でもいい!あの四人以上に酷い料理を作る人物はいないのだから。




「い、一体なんだってんだよ…。何そんな必死に…。あ」



ヒスイも気付いたようだね。
いかに僕達が言っていることの重要性が。






「だ、だけど俺にだって予定ってもんがな…」



やはり即決とはいかないか……。

仕方無い!
ここで最終兵器投入!!








だってヒスイと一緒に遊びたいだろ?」

「う?」



必殺!子ども特有熱視線!
さあこの瞳から目を逸らせるか?!







「ひすいおにーちゃもきてくえゆの?」

キラキラとした瞳でじっと見つめられれば、ヒスイも“否”とは言い難そうだ。



「…っ!……ひ、卑怯だぞサレ!!!」
「なんとでも言いなよ。さあ、断れるならどうぞ?」
「くっ………」





ね、ヒスイおにーちゃとあしょびたい」


「っっっっっっ!!!」







ヒスイ陥・落☆














というわけで次回は特例として五人グループになるけど…絶対異論は無い筈。
ヒスイ、君が要なんだからね!!!!